「Bioshock Infinite」全てはプレイヤーをもてなすために

「Bioshock Infinite」Bioshockの遺伝子とは”にてBioshockがBioshockであるための最小の単位を考えてみた訳ですが、それではまだ足りません。Bioshock Infiniteの物語は主人公ブッカーの為のものではなく、全てはプレイヤーとエリザベスの2人の為にあると言っても過言ではありません。




やはり今更説明するようなことではありませんが、Bioshock Infiniteにはゲームの殆どを一緒に過ごすキャラクター「エリザベス」がいます。不思議な力を秘め、巨大な怪鳥や強固なセキュリティに守られた塔の上で過ごすお姫様。ゲームでの主人公ブッカーの目的のその全てが彼女の為、もしくは彼女に関連したものになっています。主人公の行動の起点であり終点は彼女です。そしてプレイヤーの行動の起点であり終点となるのもまた彼女です。

さてFPSにおいて非力な女の子を護衛する、という役割を帯びた主人公が登場するとどんなことが起きるでしょうか。
普通ゲームで護衛対象が登場すればプレイヤーには対象が死んだらゲームオーバーだの拠点に対象が到着するまで待機しろだの無駄にゲームの都合をプレイヤーに押し付けるデザインにするでしょう。
Bioshock Infiniteのエリザベスは非力な女の子と言えますが、戦う力を持たない護衛対象ではなく プレイヤーのパートナーとして振る舞います。
ゲームプレイ中をほとんど一緒に過ごす故に最も目にするであろうエリザベス。彼女が彼女のプレイヤーの視界への入り方も一工夫してあります。
エリザベスはプレイヤーが戦闘している時以外は必ず視界のどこかに入り常に存在感を示し続けます。移動するときはプレイヤーを導くように先を走り、探索中は一緒にアイテムを探すような素振りや壁にもたれかかって物思いに耽ったりします。もちろんただ格好だけではなくプレイヤーの気付かなかった重要そうなアイテムも示してくれます。
逆に戦闘中になると突如として姿を消したようにプレイヤーの視界から消えます。基本的に物陰に隠れるか移動中とは逆にプレイヤーの後ろにくっついているのですが、絶対に彼女は死なないし敵から攻撃を受けることも無い存在です。なので「もうお前が戦えばいいじゃん」とゲームに突っ込みを入れられる可能性もありました。 が、当然そうはなりません。それはひとえに「プレイヤーの視界に入らない」「適度なサポート」「設定上の彼女の立ち位置」がプレイヤーからの無粋なツッコミをさせないようにしています。
視界に入らないので戦闘中に彼女が何をしているかわかりにくく、その割にはスカイフックで後ろからついてきたり弾や回復アイテムを投げてくれる等存在感も示します。 プレイヤーに彼女が隠れながらも彼女に出来る戦いを繰り広げているだろうと思わせる存在感。それこそが彼女をプレイヤーのパートナーであると認識させる力の発生点です。

エリザベスには様々な秘密や特殊な力があることが徐々にわかってきますが、彼女自身は絶対に戦いません。美味しいところは全てプレイヤーが食すことが出来ます。彼女は弾薬や回復アイテムを探し、時に怯えたりプレイヤーにねぎらいの言葉を掛けてきます。いわばプレイヤーを褒めるための存在です。
Bioshock Infiniteは難易度ノーマルで遊べば戦闘ではそう難しく感じるポイントは少ないと思います。Bioshock 1にはなかった自動回復するシールドが存在し、死が近くなるとエリザベスは最大限助けてくれますし、そもそもゲームオーバーすらありません。倒れれば必ずエリザベスが助けてくれます。
エリザベスのサポートもやはり絶妙な調整がなされています。どんな遠くからアイテムを渡されてもほぼ一瞬で到着し、その間ブッカーはダメージを受けません。何か必要なスキルも無いのでただUseキーを押すだけで様々な恩恵が受けられます。そして彼女の特殊能力であるティアの開放は全てプレイヤーに委ねられています。 マップ内に点在するアイテムやタレット、一度に一つしか開けないのでどれを開くかはプレイヤー次第。
ゲームをゲームとして割り切った中で生み出される適度なチャレンジと最適な難易度。これが生み出すプレイヤーへの圧倒的褒められ感は並みのゲームでは作り出せない絶妙な塩梅です。
まさにプレイヤーはこのゲームに手厚くもてなされます。
このプレイヤーへ課す挑戦とクリアーした際に褒めちぎるバランス感覚の素晴らしさ。これはBioshock 1に比べ格段に進化した部分です。Bioshock 1の様に周りが敵だけだったあまりに乾いた世界とは打って変わり、全力でプレイヤーの味方をしてくれるエリザベスの存在はプレイヤーにとってゲーム内でのかけがえのないものへと育っていきます。
 ”「Bioshock Infinite」Bioshockの遺伝子とは”にておもいっきり「主人公とプレイヤーが全く別の物として存在する」ようになったと書きましたがここで前言を翻します。エリザベスへの思いに関してだけは最終的にブッカーとプレイヤーは全く一致する様になります。心は一つです。

プレイヤーと主人公、そしてゲームの世界を繋ぐティアを開くエリザベスはまさしくBioshock Infiniteを象徴するキャラクターです。

コメント